再開発は地権者が主体となる事業で、再開発施設の一部を主にデベロッパー
(参加組合員)に売却することで、
事業費(設計、解体、建築、補償等)を賄う事業です。
再開発のデベロッパー担当者の役割は売り急ぐ地権者から安く土地建物を買取ったり、
再開発での保留床(地権者から買取る再開発施設の一部)をより安く、
より多くすることで、仕入での手柄を立てることです。
そのため、判断力の低下した高齢地権者を再開発組合役員に選出し、
デベロッパー担当者が事務局として理事会に入り込み、鑑定士、コンサル、
弁護士を使って、デベロッパーの言いなりの傀儡理事会にします。
具体的には、鑑定士が(再開発による開発利益を加味しない)低い従前評価を行い、
コンサルがその従前評価を理由に保留床単価が安くなると説明し、
弁護士が地権者の増床は認められないと法解釈して、デベロッパーの
都合のよい方向に誘導します。
そうした誘導を真に受けた理事会役員は自らがデベロッパーの操り人形となり、
開発利益未反映の従前評価方針、分譲想定の半値以下の保留床単価、
地権者の増床を制限する取得ルール案をつくり、委任状中心の総会で承認を取ってしまい、
外見上は地権者が自らの判断で、権利変換条件を決めた形にされてしまいます。
そのため、後になって一部地権者が不公正な再開発条件となっていることに気づき、
従前評価に開発利益が未反映で不当だ、保留床単価がデベロッパーに有利過ぎる、
地権者の増床が制限されるのはオカシイ等の理由で条件変更を求める訴訟を起こしても、
裁判所は地権者全体で決めたルールに沿った内容に異を唱えているに過ぎないと、
取り合ってもらえない結果になります。
そのような理不尽な再開発が進められ、あとで後悔するようなことに
ならないようにするには、準備組合設立後のなるべく早いタイミングで以下の
3点の方針を地権者が決めることが重要です。
①保留床単価は分譲想定の75-80%程度とする
②従前評価では開発法による開発利益増分を反映する(保留床単価=権利床単価とする)
③従後価格表を公表し最低1区画自由に取得できる透明な権利変換ルールとする
こうすれば、参加組合員になるデベロッパーには適正な利益をもたらし、
転出者も含めた全地権者に開発利益を衡平に配分でき、各地権者は個別事情に応じて
自由に住戸選定できる再開発が実現します。
(ちなみに、これらは一括決議集会の建替え決議で80%の同意が必要な
一般的な建替え事業では当たり前に取り入れられています。)